それから (岩波文庫)

それから (岩波文庫)

高校生や中学生の時に国語とか現代文とかで習った古典って、考えてみればほとんど読んだことが無いことに気がついたので、少しずつでも読んでいこうかなと。
主人公は30歳。ニート。そう、ニートですよ。なんだか理想を実現するためならともかく、糊口を得るために仕事をするのはいやなんだって。でもってお金持ちの親父さんから毎月お手当てをもらって、東京都心の一等地(多分今の地名でいうと新宿区の東の方かな)の一戸建てにすんで、あまつさえお手伝いさんや書生までいる。日々悶々として(るように読める)人倫にもとることをやらかして、その事実に呆然とするってお話。そういや、「こころ」の先生もニートだったよな。妻帯者だけど。明治年間の大学進学率はほんの数パーセント。大学卒ってことは超エリートですよね。この小説は朝日新聞に連載されていたってことは、こういう設定、つまり超エリートが親のすねをかじってふらふらしているってのがそんなに変な設定じゃないってことなんでしょうね。主人公の心の中の描写やなんかよりもそんなことに感心してしまいました。主人公の友人たちも結構職業をぽんぽんと変えて行きます。ここには終身雇用制度なんて微塵もみられませんよ。