第四部【釈義】
(6)当大使館が確かめ得た範囲では、この蜂起は陸軍部内の若いファシスト分子が工作したクーデターの性質を持っており、天皇の顧問である老臣の全部を壊滅して、いわゆる「昭和維新」を生じせしめることを目的としている。何人かが天皇に近づき、軍の反乱分子の計画に干渉する勅命を得ることを防ぐためであろうが、天皇自身は明らかに宮城内で交通隔離されている。この蜂起の直接的原因は、陸軍内のファシスト分子を刺激した永田将軍の謀殺者相沢の裁判と、自由主義者的な候補者を予期に反して多数当選させた先ごろの選挙とであるらしい。最終の情報は海相大角提督が首相代理になったことと、真崎将軍がこの事件の指導精神であったことを伝えている。この運動は最後的細部に至るまで前もって完全に組織されたものらしく見受けられる。【釈義終わり】
(7)当大使館はただ今総統信頼すべき筋から牧野伯爵が安全であることを知った。
グルー