会談第二号

外務大臣内田康哉伯爵

ニューヨーク・ナショナル・シティ銀行事件

三時、約束によって内田伯爵に面会。ニコニコしながら長い間私に会わなかったという。私は外相就任後の彼をなるべく煩わすまいと思ったのだと答えた。

私は彼がニューヨーク本店の命令によって、大阪の商業区域のある種の写真撮影を命じた同銀行大阪支店の件を詳細に説明した。

私は更に大阪の憲兵隊が、これについて何らの法律も規則もないに拘らず、同銀行に写真をとらせてはいけないと申し入れたことと、それに続いて日本の新聞のほとんど全部が、銀行がこのような写真をとらせるのは、戦争が起った場合爆撃の役に立たしめるため、米国政府にそれを送るのだといって銀行を攻撃したことを話した。なおこの新聞の運動が、同銀行の名声と商売を傷つけたことを詳しく述べ(一)正式の調査を開始すること(二)その報告を受理した上は、既になされた損傷を部分的にでも矯正する目的で、同銀行を非難から免除する公式声明を新聞に発表すること(三)新聞の紙上運動を中止させる道をとること、以上を申し入れた。

内田伯爵は私の表現を注意深く聴いたあげく、日本では新聞に干渉することはむずかしいが、カーティス氏の有田氏訪問によって、既に調査は開始されており、その報告が受取られたならば、彼は私の抗議の立場からそれを十分考慮しようといった。