ルーズヴェルト選挙さる

今度の大統領選挙に対する私自身の反応は、私がフランク・ルーズヴェルト潜在的能力に関して極めて僅かの知識しか持っていないので「用心深く待つ」の一語につきる。ある人々は大統領の位置に就くと、偉大さを取得するものだが、フランクはすくなくともその背景をもっている。彼がどの程度に国際問題を把握しているか、これも私はほとんど知らないが、彼は彼の国務長官を選び出す、立派な名簿を持っている。われわれ自身がどういうことになるかについては、私はまったく何も分からないし、また三月四日過ぎでなくてはわからないだろう。新聞には各種の考えや予報がでているが(ニューヨークにいる日本の特派員の一人は、ミズリ大学の新聞学校長、デーウッド・ウイリアムス博士が恐らく駐日大使に任命されるだろうと打電している)それらはすべて、あて推量に過ぎない。私としては当然、日本での仕事をなしとげたいが、しかし、かえる前の鶏を勘定することはやめる。

日本の新聞は一致して選挙の結果をよろこんでいる。第一に彼らは日本にとって有利な関税政策を見こし、第二には満洲問題について日本が世界に対して持つに至った面倒の多くに個人的に責任があると考えるスティムソン氏が、退場することを意味するからである。大使館員の日本の召使−パーソンズの女中やヂョンソンの運転手までが、このニュースに大よろこびをし、二人とも「もうスティムソンはいなくなる」といったことは意味が深い。少数の日米人以外は、米国人が各種平和条約に関する米国政府の態度を堅く支持し、日本に同情しようとはしていない事実を理解しないのである。