スティムソン長官の「下劣にして挑戦的な」演説
軽井沢における八月十日乃至十三日の休養から、私を東京に呼返した出来事は、スティムソン氏が外交関係協会で行った演説に対する日本各紙の感情の爆発である。ネヴィルも帰京した。今これを書いている私は八月七日に行われたと思う演説の内容をまだ見ていないので、どんなことがいわれたのか知らないが、最新の新聞報道によって、スティムソン氏はケロッグ条約を極東問題に応用すべきことを学究的に語ったので、直接日本を侵略者として攻撃してはいないことが分かる。それはどうであるにせよ、例の精悍なる白鳥氏は、日本の新聞に向かって、全日本はスティムソン氏の攻撃に憤慨していると述べ、新聞は「悪意あるプロパガンダ」「高度に不穏当」「軽率な発言」「下品にして挑戦的」などの誹謗的な論評を揚げた。二日間にわたって日本語新聞はこんな記事で一杯であり、その論調は日米親善にいささかも貢献するものではなかった。このような事件が終わった後に、やっと私の手元に到着した演説の全部には、何も日本が腹を立てねばならぬようなことはない。日本はしょっちゅう満洲で自衛行動をとっていたと主張していたのだから、この演説に対する外務省の態度についての一般的反応は、やましい心の驚くべき表示というべきである。