大使館のロマンス
この手紙が私の家族の面々のところへ到着するまでには、エルシイに関するよい知らせは、もはや知れ渡っていることだろうが、しかし八月のいつか公表されるまでは、秘密を保たねばならない。六月三十日、エルシイはセシル・ライオンと婚約した。彼は東京にきて一ヶ月になるかならぬかである。それで、彼がエルシイとの結婚の許しを受けにきた時、私は彼が偉くすばしっこいことをいった。彼は「でも、あなたは私を非難できますか」と答え、これに対しては、もちろん何もいうことはなかった。このことについてわれわれは皆よろこんでいる。彼は立派な、しっかりとした若者で、年は二十九。すくなくとも身長の点では、他の婿たちに引けを取らない。その他の彼の資格は、エルシイにまかせる。人格と性格の点から見ての、エルシイの選択に関するわれわれの顕著なる賛成は別問題としても、私は彼女が外交官を夫に選んだこと、当然ながら悦ばしく思う。三人の娘を外交官の嫁にしたというのは、レコードだろうと思う。彼女が快活と音楽と日の光以外の何者をももたらさなかったわれわれの家庭を、離れることは淋しいが、この考えばその淋しさを補って余りがある。いまやエルシイはすくなくともアリスと私とが非常に好きになるような息子をもう一人、私たちのところに連れてくるのだ。彼らは私たちの二十八回目の結婚記念日、十月七日に式をあげることにしている。