ソ連大使、日米間の悶着を予見す

今日、近く休暇を取るソ連大使ユレネフ氏を訪問し、二人の会話は日ソ関係について始められた。彼は両国間にある種のむずかしい問題があるにはあるが、日本人は戦争を欲せず。戦争の準備も出来ていないので、何も心配はしていないといった。彼は私が日米間に関して扱わねばならぬ諸問題のほうが、彼が日ソ間に関して扱わねばならぬ諸問題よりもはるかに面倒で、前者は後者にくらべるとよほど面白くないと考えている。なお日米関係の将来は甚だ不吉だと考えていることを言外にもらした。私はこの点でユレネフ大使と議論を戦わし、日米間の重大問題の一つ一つを取上げ簡単に説明した上、私はこれらの問題が平和的に解決しえる自信をもっている、もし解決されないものならば、すくなくともそのままにしておかれるだろうと語った。

ユレネフ氏は、ソ満国境紛争に関する情勢は、この前二人があった時と少々かわってきたといった。現在意図されているのは国境の境界確定を取上げるのではなく、それによって起きる特定の紛争を取上げる委員会を組織することである。彼はこの前の会見の時私に話したように、最初、ソ連として、日満両国とでなく、そのいずれかの一国の委員を相手にすることに同意すべきであるとの立場をとった。だがソ連政府は今や同格の基礎に立って両国の代表と会見することに同意した。つまりソ連側代表と同数の代表を、日満両国が一緒になったものから出すということである。廣田氏はまだこの申し出を受入れておらず、とくに日本の軍部を、この問題について満足させることがなかなかむずかしいので、この交渉は長期にわたるだろうと見ている。ユレネフ氏は委員会が成立するまでに、会議事項、会議の場所、その他について議論や交渉が大いに行われるだろうと見ており、そして彼自身がこれらの交渉にあたらねばならぬので、この夏軽井沢へ行くことはあまり望みを持っていない。