日本の愛国者、蘭印を脅迫す

パプスト、定例会談のために来訪。退官陸海軍将校を含む愛国団体明倫会の代表がきて、近くバタヴィアで開かれる日・蘭印通商会議に関して、この団体が起草した覚え書を提出したといった。この覚え書で明倫会は、オランダ政府が会議を成功に導くこをと保証せよと、幾分喧嘩腰にすすめている。いろいろなことが書いてあるが、中にオランダ政府が蘭印の原住民を圧迫していることに言及し、もしオランダ政府がこの会議で日本と折合いをつけることに失敗すれば、両国の関係に「暗雲」が立籠めることになろうと書いてあった。パプスト将軍は、二つの点を取上げたといった。(一)オランダ政府と蘭印の原住民との関係は純然たる国内問題で、彼の政府は国外者がこれに干渉することを許さない。(ニ)「暗雲」に関する観測は、これまた受入れることの出来ぬ脅迫的のもので、もし彼がこの覚え書を受理すべきならば、この二点は撤回されねばならぬ。すると日本の代表は、明らかに黙認して頭を下げた。公使が「私はあなた方のお辞儀を陳謝ととってよろしいか」というと、彼らは再び頭を下げた。

公使はさらに、明倫会は日本政府に、もし印度の会議が成功しなかったら、オランダと外交関係を絶つことを勧告したそうだと話した。

公使はまた米国大使館が、通常どのような手続きでこのような代表を迎え、彼らの通牒を受理するかと質問した。そこで私は代表は通常、礼儀正しく迎えられるが、大使館は米国を代表して政府あるいは合衆国官吏に宛てられた如何なる覚え書、抗議その他の通牒を受理することも強固に拒んできた。日本側からのこれらの通牒は、通例の適切な経路、即ち日本外務省とワシントンの日本大使館を通じてなければならぬという立場を取っているからである。

米国大使館が頑固にこの処置を固守していることは、愛国主義的およびその他の団体が、彼らの考えをわれらの前に持ってくることを阻止するのに成功したらしく、私が着任して以来、このような団体が大使館を通じて通牒を合衆国政府に提出しようという企ては、こんな企てが期待されてもいいような時期が数回あったにもかかわらず、実際には一度も行われていない。